石川 紀子, 前田 留美, 堂前 有香, 齊藤 千晶
和洋女子大学紀要 65 271-277 2024年3月 筆頭著者
部署異動後に小児看護に新たに携わる看護師を対象とした「小児看護実践能力の向上を目指したe-ラーニング教材」による学習を実施し、学習の成果と教材の改善点を検討することを目的に調査を行った。e-ラーニング教材は、先行研究を基に研究者間で検討し、小児看護特有の知識や小児の発達段階・親の心理状況について7つの単元で構成し、各単元にはテーマに沿った到達目標を設定した。1つの単元は8~10分の動画教材で、個別のIDを用いたWebシステム上で取り組む動画教材である。対象は、小児が入院する部署に異動し小児看護に新たに携わることになった異動後1年以内の看護師とした。A県内で小児病棟を有する医療施設宛に研究依頼書を送付し、同意の得られた看護師を対象に、各自の都合やペースに合わせてe-ラーニング教材を用いた学習に取り組んでもらい、全教材の視聴終了時に質問紙を用いてe-ラーニング教材に対する意見を、1ヵ月後に面接ガイドに沿った半構成面接で、学習内容の実践への適用について調査した。教材に対する意見は単純集計と自由記述は調査項目に沿って整理した。学習内容の実践への適用は、対象者ごとに逐語録を作成し質的帰納的に分析した。e-ラーニング教材を用いた学習には6名の看護師が参加した。対象者の看護師経験年数は2~19年、部署異動後の期間は3~9ヵ月であった。e-ラーニング教材に対する意見では、学習の満足度は高く、その理由として小児に関わるうえでの要点がまとまっていること、集中して視聴できる時間の長さがあげられた。教材の時間はちょうどよい長さで、分かりやすいという回答を得た。分かりやすいと回答した理由として、成人と小児の違いや、小児の身体的・生理的特徴が学べたこと、子どもの心理的特徴や発達段階の特徴が学べたことがあげられた。また入院する子どもの家族の特徴や関わりの必要性について学べたこともあげられた。学習内容の実践への適用では、子どもをアセスメントする際の変化として、[フィジカルアセスメントを行う順番や測定方法を意識]や、[子どもの発達段階を意識]すること、[子どもの機嫌やストレスに注目]があげられた。家族のアセスメントでは、[子どもだけでなく親や家族にも注目]、[親のストレスに注目]して情報収集し、[親の体調や自宅にいる家族について意識的にアセスメント]することがあげられた。看護実践における変化では、[教材の具体例を参考に子どもに話しかけるようになった]、[処置前に子どもの理解に合わせた説明をする]ようになったことや、親の心配を軽減する必要性を感じ、[測定したバイタルサインの測定値を伝える]変化が述べられた。e-ラーニング教材での自己学習を通じて、子どもの発達や身体的特徴などの根拠をふまえた子どもと家族のアセスメントにつながったこと、教材で示した声掛けや関わりの具体例を踏まえて病棟での看護実践につなげていくことができていると推察された。(著者抄録)