Journal of Pharmaceutical Communication, 15(1) 13-21, 2017 Peer-reviewedLead authorCorresponding author
本研究では、薬局における服薬指導場面のロールプレイ実習を行った。6年制以前の薬学教育を受けた薬剤師と患者のやりとりを質的に検討し、薬局での薬剤師-患者コミュニケーションの特徴を明らかにすることを目的とした。対象は東海地方の保険薬局に勤務する薬剤師6名であった。薬剤師役・患者役・観察者の各役割を担当できるロールプレイ実習を実施し、実習中の薬剤師役と患者役の会話を質的分析手法であるStep for Cording And Theorization(SCAT)を用いて分析を行った。実習終了後、対象者個別に半構造化インタビューを実施しSCATを用いて分析を行った。ロールプレイの分析からは1)薬中心の服薬指導、2)患者の解釈モデルの不十分な理解、3)服薬指導時間の短さという薬剤師のコミュニケーションの特徴が示された。冒頭で【薬剤師による会話の方向づけ】が行われ、その後【薬に人を合わせる指導】が行われていた。【服薬説明の手順】は処方薬に関する情報提供を先に、服薬に関する情報収集を後に行っていた。また【Closed Questionによる薬剤師の質問】が繰り返され、【患者の解釈モデルの確認不十分】となっていた。服薬指導時間は平均270sec(198-329sec)であった。インタビューの分析からは、薬剤師役の《患者に対する認識》、《服薬指導時の先入観》、そして《薬剤師役の自己評価》といった心理的プロセスが薬剤師の行動に影響していたことが明らかになった。今後薬剤師がとった行動とその心理的プロセスの双方を検討できる体験型実習が、薬剤師患者コミュニケーションのトレーニングに有用であると考える。(著者抄録)