関根 康人, 薮田 ひかる, 木村 淳, 古川 善博, 高野 淑識, 矢野 創, 船瀬 龍, 高井 研, 石原 盛男, 渋谷 岳造, 橘 省吾, 倉本 圭
日本惑星科学会誌遊星人 21(3) 229-238 2012年 査読有り
エンセラダスの南極付近から噴出するプリュームの発見は,氷衛星の内部海の海水や海中の揮発性成分や固体成分の直接サンプリングの可能性を示した大きなブレイクスルーであるといえる.これまでカッシーニ探査によって,プリューム物質は岩石成分と相互作用する液体の内部海に由来していることが明らかになったが,サンプリング時の相対速度が大きいこと,質量分析装置の分解能が低いことなどの問題があり,内部海の化学組成や温度条件,海の存続時間など,生命存在の可能性を制約できる情報は乏しい.本論文では,エンセラダス・プリューム物質の高精度その場質量分析とサンプルリターンによる詳細な物質分析を行うことで,内部海の化学組成の解明,初期太陽系物質進化の制約,そして生命存在可能性を探ることを目的とする探査計画を提案する.本提案は,"宇宙に生命は存在するのか"という根源的な問いに対して,理・工学の様々な分野での次世代を担う若手研究者が惑星探査に参入し結集する点が画期的であり,我が国の科学・技術界全体に対しても極めて大きな波及効果をもつ.