東郷 裕
『The Basis』 : 武蔵野大学教養教育リサーチセンター紀要 = The basis : the annual bulletin of Research Center for Liberal Education, Musashino University (6) 199-207 2016年3月1日
近代国家の成立以降、世の中の不正(正義に反する行為)に対しては法律が不正を行った者にそれ相応の処罰を与えることで、社会秩序を回復するための正義を実現してきた。しかしそれが叶わない場合、不正に対して私的復讐(private revenge)という手段に訴え、自らの考える正義を実現する者もいる。本稿では復讐のテーマの始祖『スペインの悲劇』と、小説として再び同じテーマで数世紀後に登場した『嵐が丘』を取り上げる。そしてそれぞれの主人公であるヒエロニモとヒースクリフがいかなる不正に対してどのような復讐を行い、そして彼らがどう描かれているのか、またそれぞれの不正そのものに注目することで何が明らかになるのかを検討する。