齋藤 英里

経済史家大塚久雄(１９０７-１９９６）について、英文でその業績を紹介した。

本書第13章に｢『アイルランド･朝鮮類比論』の展開｣を執筆した。朝鮮における3･1独立運動の衝撃を受けて、日本では朝鮮統治問題を英国のアイルランド問題と比較検討する論者が多く出たことに着目し、新渡戸稲造、東郷實らの植民学者、吉村源太郎、時永浦三らの植民地官僚、吉野作造、矢内原忠雄ら自由主義者の立論をそれぞれ検討した。

19世紀アイルランドにおける工業化の特質について、麻工業や造船業を中心に、地域別動向を視野に入れて分析した。アイルランドは産業革命の発祥地、イングランドの至近下に位置するため、資本・技術・労働力等、後者の圧倒的影響を受けた。それゆえ、アイルランドの工業化は、イギリス経済に適応した「先進地帯」に主に限定されたのである。 （総頁数398頁中、P185～P216を担当）

本書の第1部国際労働力移動の歴史分析､第1章を担当し､｢19世紀イギリスにおけるアイルランド人移民の特質－国際労働力移動史の一事例－｣を執筆した｡同論文で､アイルランド移民が国際労働力移動の原点であることを強調した｡（総頁数406頁中、P15～P43を担当）

日本の代表的植民政策学者､矢内原の学説体系のなかにアイルランド論を位置づけた｡（総頁数364頁中、P257～P283を担当）