大谷 弘

In this paper, I will investigate Wittgenstein's idea, which I dub Wittgenstein's contextualism, that there is a big gap between understanding a sentence in the sense of knowing the idioms and discerning the grammar in it, and what is said by using it in a particular context. Although Wittgenstein's contextualism in this moderate sense is a familiar idea in Wittgensteinian scholarship, it has mainly studied as an idea in "Wittgenstein's philosophy of language." Therefore, what is lacking in those preceding stuides is the study of the relation between Wittgenstein's contextualism in my moderate sense and his philosophical therapy. Therefore, I shall investigate that relation and show that (i) Wittgenstein's philosophical method cannot be intelligible without taking Wittgenstein's contextualism into consideration and (ii) Wittgenstein's focus on context is deeply connected with his method for treating philosophers' "pictures."

ウィトゲンシュタインの著作『確実性の問題』に表れる「世界像（Welt-Bild）」という観念について、それがどのような本性を持つものと考えられるべきかということを検討した。世界像を、①経験命題、②言語規則、③端的なナンセンス、とする三つの解釈の問題点をそれぞれ指摘し、これらに代わる新しい解釈として、世界像とは不明確な物の見方という意味でのっ「像」である、と論じた。

まず認識論における文脈主義の様々なヴァージョンを検討し、ラム・ネタにより提案されているものが、もっとも見込みのあるヴァージョンであるということを明らかにした。その上で、ネタの文脈主義にも欠陥があり、我々の常識が我々の生活と切り離せないという側面を正当に扱えていないと論じた。そして最後に、常識と生活の結びつきについて、ウィトゲンシュタインの『確実性の問題』に依拠し、重要と思われるポイントを示した。

倫理学を学ぶことに関して、それがどのようなレベルで、どのような仕方で意味を持つのかということを論じた。特に研究者を目指すわけではない普通の人にとって倫理学的な規範的議論を習得することがどのような点で重要であるのかを論じた。御子柴善之（早稲田大学）、勝西良典（上智大学）両氏とのシンポジウム。

ヒラリー・パトナムの実在論を、特に道徳に関する立場に注目し、論じた。特に、パトナムの多様な議論を三つの種類に分類することで、よりよく理解できるということを示した。

国語教育に関心を持つ小学校教員に向けた講演。

ウィトゲンシュタインが『哲学探究』で論じた規則の問題を手がかりに、言語が規則に支配されているという見解を検討した。その上で、言語が規則に支配されているという見解に源には、合理的な判断はなんらかの基準に基づかねばならないという合理性への偏見が存在すると論じた。

哲学的理論の主張や論駁といった通常の論証ではなく、言葉の位置付く言語実践を思い描くというものとして後期ウィトゲンシュタインの哲学的方法を描いた。その上で、その点を理解することで、独断的な主張を含まないものとしてウィトゲンシュタインを解釈に解釈できると論じた。

ウィトゲンシュタインがどのような真理観を持っていたのかを明らかにし、彼の真理観が現代のデフレ理論的真理観とどのような点で異なっているのかということを論じた。

ジョージ・バークリの抽象観念批判を手がかりに、彼の提起した問題に対してダメットやウィトゲンシュタインがどのように答えうるかということを検討した。そして、それを受けてダメットとウィトゲンシュタインがどのような哲学的観点を共有し、またしていないのかということを論じた。

パトナムがカルナップの帰納論理の試みをゲーデルの不完全性定理を応用して論駁した論証を手がかりに、現代の認識論における合理性概念を分析した。

センの潜在能力アプローチとパトナムの内在的実在論を飢饉や福祉などの問題を検討することでリンクさせ論じた。

自然化された認識論をめぐる近年の論者の主張を検討し、自然主義者、反自然主義者ともに認識論的合理性について踏み込んだ分析を行えていないと論じた。