和田 博文
『奈良大学紀要』〈奈良大学〉 (21) 65-85 1993年3月1日
本稿は第一次「青樹」総目次と、竹中郁書簡の翻刻で構成されている。第一次「青樹」は大正十四年一月に、天野隆一を編輯兼発行者として創刊された。昭和六年十二月まで全三五冊。前衛詩運動からレスプリ.ヌーボーへの移行期にあたり、この詩誌にも時代思潮は明確に現れている。美術と詩の交流のなかで作風を形成する天野隆一、ノイエ・ザハリヒカイトの詩人として頭角を現す山村順、海港都市神戸を代表する福原清、シネ・ポエムの方法で有名になる竹中郁、短詩運動から新散文詩運動へと移る北川冬彦、モダンなセンスを誇る北園克衛など、都市モダニズムを代表する詩人たちが顔を揃えている。また発行者だった天野氏宅には、竹中郁の書簡が十四通保存されていた。そのうち十二通をここでは翻刻している。なかでもフランス遊学中に書かれた七通は、竹中の詩人としての自己形成に関わる貴重な資料である。