八木 真奈美
多文化社会と留学生交流 (14) 81-94 2010年
本稿はまず、在日外国人を対象とした日本語教育支援について、具体的な施策の充実と同時に、在日外国人の声を聞き、彼らが生活する日本社会を文脈として見る必要があるのではないかということについて述べる。次に、在日外国人の実態を知り、その背景にある社会の様相を明らかにすることを目的として行った本調査について述べる。そして、本調査の協力者が日本という市場では価値の低い中国語という言語資本を使って友人を作り、日本社会での情報収集が容易になったり、人的ネットワークが広がったりしたという分析結果を報告する。最後に、このケースから、協力者は母語という言語資本を含めたさまざまな資本を持っている存在なのであり、多様な言語や文化を持つ個人がそれぞれに尊重され、自己実現をはかることが可能になる社会こそが豊かな社会なのではないかということを主張する。