難波 経豊, 八尾 武憲, 原口 亮, 池田 隆徳, 中沢 一雄, 大江 透
心臓 37(6) 494-501 2005年
整脈分野を含めたさまざまな分野に応用されている.コンピュータシミュレーションを使用する利点には,現段階では手技的に実現困難な動物実験の結果を予測できる点が挙げられる.また,もし動物実験が可能であっても,事前に実験結果を理論的に予測しておくことによって研究を効率的かつ正確に進めることができる.また,シミュレーションではノイズのないクリアーな結果を得られることも有用な点の一つである.さらに,不整脈分野では,コンピュータシミュレーションは,コンピュータグラフィックス技術を併せて利用することによって,心臓における不整脈発作中の興奮伝播パターンを可視化でき,不整脈現象の理解に大きく貢献する.このことから,今後もコンピュータシミュレーションは不整脈研究の一翼を担うと考えられる.<BR>本稿では,不整脈研究で興奪伝播パターンの解析に用いられるコンピュータシミュレーションの手法について概説した後,不整脈の中でも特に複雑な興奮伝播パターンを呈し,その機序の解明にコンピュータシミュレーションが大きく貢献してきた細動現象について概説する.