筒井 孝子, 熊岡 穣, 香取 幹
ジェネラリスト教育コンソーシアム 19 132-144 2023年8月20日 査読有り
本研究では,住み慣れた地域で3年間,介護サービスを利用しながら,生活を継続していた要介護高齢者に着目し,彼らが利用していたサービス(サービスの組み合わせ)と要介護状態の変化との関係を分析した.要介護度の変化としては,改善及び悪化に着目し,悪化群と改善群に特徴的なサービス(サービスの組み合わせ)モデルについて検討した.分析には,2015年6月以降に利用を開始し,2018年6月までに利用を終了した居宅の介護サービス利用者12,003名のうち,6ヵ月以上継続して,介護サービスを利用していた要介護1-4の利用者8,029名を対象とし,利用期間によって,短期利用群,長期利用群の2群に分けた.この2群別に,AIの一分野として,1980年代から研究されてきたベイジアンネットワークを用い,要介護度の変動と利用サービスの関係を示すモデルを作成した.研究の結果,要介護度の改善に資するサービスや,悪化と関連するサービスが示された.さらに,利用期間の長さによって,同一の利用サービスであっても,要介護の変動への影響が異なることが明らかにされた.ただし,本分析には,利用者の年齢,傷病の有無,手段的日常生活動作項目などの基本情報,医療サービスの種類や量,環境因子などの情報は反映されていない.このため,今後の課題としては,因果を説明できる要素を含めた分析をさらに行い,これを踏まえたモデルの構築を検討すべきと考えられた.(著者抄録)