中村 慎崇, 下野 義人, 岩瀬 剛二, 大藪 崇司, 北出 雄生, 木下 晃彦, 小長谷 啓介, 山中 高史
日本森林学会大会発表データベース 130 462-462 2019年
<p>Tuber属菌は経済的に重要な子実体(トリュフ)を形成する外生菌根菌だが、日本に生育する本属菌の生態的な知見は未だ乏しい。本研究では日本産黒トリュフの一種であるアジアクロセイヨウショウロ(T. himalayense)の子実体を5年5ヶ月にわたり採集し、これらの標本に基づいて本菌の時間的・空間的な遺伝的動態を調査した。京都府内の発生地に4.0×8.0 mの調査区を設置し、1ヶ月ごとに子実体の発生位置を記録した。また、調査区から最大約70 m離れた5カ所の発生地点からも子実体を採集した。次に、子実体の乾燥標本からDNAを抽出し、19座位のマイクロサテライトマーカーを用いて複数座位に基づく遺伝型(MLG)を決定した。全期間を通じて調査区内で465個の子実体を採集し、そのうち445個のMLGを決定した。本菌の子実体を形成するジェネットは調査区内で極めて多様性が低く、ヘテロ接合を示したものを除く317個のうち315個は単一のMLGであり、5年半にわたり子実体の形成に関与し続けていた。一方、調査区外の5カ所の発生地のうち4カ所で調査区内とは異なる単一のMLGが優占していた。これらの発生地は連続しておらず、ジェネットの拡大に伴う分断や無性的な分散等が示唆された。</p>