佐藤 宏子
日本家政学会誌 72(2) 59-73 2021年 査読有り
<p> 本研究では, 1982年から2014年までの32年間に農村直系制家族に生じた世帯形成と世代更新の世代的変化を明らかにする. 本稿では4時点パネルデータの239人 (239世帯) を「MC-1」 (1945~54年に結婚), 「MC-2」 (1955~64年に結婚), 「MC-3」 (1965~79年に結婚) に区分し, 結婚コーホートによる比較分析を行った. 本研究から次の知見が明らかになった. 第一に, 2014年の次世代更新率は「MC-1」70.1%, 「MC-2」37.9%, 「MC-3」26.0%で, 「MC-1」は「MC-2」と「MC-3」よりも有意に高い. 第二に, 「MC-1」の世帯形成には直系的な世代継承が維持されているが, 「MC-2」と「MC-3」では直系的な世代連鎖の持続が困難になっている. 第三に, 世帯形成の主要経路は, 「MC-1」では「子世代更新」へ向かう次世代更新の経路であるが, 「MC-3」では「更新未確定」に留まる経路に変化している. 第四に, 世代更新を有意に進める要因は「MC-1」 (1982, 1993, 2014), 「農業を子どもに継がせようと思っている」 (2005, 2014), 世代更新を困難にする要因は夫の出身地「岡部町」 (1993, 2005), 世帯職業「専業農家」 (1993), 長男の同居扶養規範「どちらともいえない」 (2014) である. 第五に, 地域社会の産業構造や就業構造の変化, あとつぎの結婚難の深刻化によって世代更新が困難になる中で直系制家族を志向し続けると, 未婚のあとつぎが親世代と同居する「更新未確定」持続パターンが主要な経路となり, 世帯形成は停滞する.</p>