山本高美, 山本政
和洋女子大学紀要 40 251-262-262 2000年3月
目的 従前製作したフォーマルドレス数体の研究から,着脱せずにアフタヌーンドレス兼カクテルドレス(ロング)として着装するには,デザイン上たくし上げが不可欠であることを確認した。しかし,長時間アフタヌーンドレスとして着用した後,ロングドレス着用に切り替えた際に出る,胴囲からミドルヒップラインへかけての"しわ"が課題であり,その解消について,特にリフォームによる研究を行うことにした。方法 袷長着をほどき,裁断されている(身頃,袖,衽,衿,共衿)各々の用布について詳細に寸法の測定を行う。その際,どのように区分裁断されているのか,また,ふくれ織りに点在する模様の配置がどのようになっているかなど把握する。それらを踏まえ,デザインをアンサンブルスーツとした。課題のしわ対策として(1)デザイン面では,ワンピースの着丈調節位置をローウエストの切り替え線にし,ブラウジング風に着装することとし,(2)素材面ではしわを念頭におき,材質を吟味し総鹿子ふくれ織りの高麗撚御召を選んだ。この布地の繊維は経,緯とも強撚糸を使って織り上げ,その後でしぼだし精錬をしているため,しわになりにくいことを想定したものである。(3)縫製面では,接着芯に重点をおき基布がニットのアピコ(旭化成)を使用した。これは,伸縮性がありしわになりにくいことと,やわらかい風合いで仕上げることを考慮したものである。結果 少ない着用実験結果ではあるが"しわ"についてはほぼ解消する事ができたと思われる。また,別布を補充した点では,ファッション性を添えた美的な造形ができた。和服のリフォームは,構想と技術面の合致という点で難度の高い物であることを痛感した。しかし,技術面では,前回研究の示唆を得て損耗した布への対応もでき,また形成,構成,補助効果など造形面での研究ができた。