岡本 由希

【目的】デンプン性食品は糊化した直後から老化が始まり，時間の経過とともに品質が低下する．そのため，デンプンの老化の抑制を目的として，糊化させたデンプンを高温で保つ，砂糖を添加するなどさまざまな工夫がなされ，老化の測定についても検討されてきている．しかし，従来法による老化の測定は，サンプルの連続性が保てず，サンプル処理や測定に時間を要するため，リアルタイムでデンプンの老化の情報を得ることが難しい．本研究では，非破壊測定法の一つである近赤外および赤外分光法を用いることで，測定の簡便化を図り，デンプンやデンプン性食品の老化をリアルタイムで測定する方法について検討を行った．<br> 【方法】試料には，デンプン（小麦，トウモロコシ，バレイショ，サツマイモ），白玉粉，上新粉を用いた．2%濃度になるように加水後，オートクレーブ（121℃，10分）で完全に糊化させ，5℃で保存し，経時的にサンプリングを行った．サンプリングした試料の老化の程度は，比色法および難消化性デンプンを指標とした酵素法で測定し，近赤外および赤外分光法によりスペクトルを測定しデンプンの老化の程度と対応している波長領域の検索を行った．<br> 【結果】比色法および酵素法によるデンプンの老化の程度の測定結果と，近赤外および赤外分光法により得られたスペクトルの二次微分値を合わせて解析した結果，デンプンの老化の程度を反映していると考えられる波長を選択することができた．このことから，スペクトル強度が変化した波長付近を解析することで，デンプンの老化の程度のリアルタイム測定に応用可能であることが示唆された． &nbsp;