落合亮太, 池田幸恭, 賀藤 均, 白石 公, 一般社団法人全国心臓病の子どもを守る会
日本小児循環器学会雑誌 28(5) 258-265-265 2012年9月 査読有り
目的:本研究の目的は, 身体障害者手帳を有する成人先天性心疾患患者を対象に,(1)社会的自立度と心理的側面との関連,(2)社会生活上の不安・困難・要望を明らかにすることである. <BR>方法:全国心臓病の子どもを守る会が実施したアンケート調査結果のうち, 身体障害者手帳を有する15歳以上の患者143名分のデータを分析した. 社会的自立を表す指標として就労状況, 年収, 障害年金受給状況を尋ね, 心理的側面を表す指標として経済的苦痛, 精神的苦痛を尋ねた. さらに, 生活上の困難・不安・要望について自由記述にて回答を得た. <BR>結果:対象者になった143名(年齢15~73歳, 中央値=24歳;男66名, 女71名, 不明6名)のうち, 身体障害者手帳1級を有する者は95名(66%), 就労者は59名(41%;このうち年収200万円以下が58%)であった. 患者の経済的苦痛には, 手術歴があること, 通院頻度の高さ, 世帯総収入の低さ, 本人の年収の低さ, 障害年金受給が, 精神的苦痛には, 通院頻度の高さ, 仕事への不満足がそれぞれ有意に関連していた. 自由記述では, 「周囲の理解が得られない(57名が言及)」「年金制度を充実させてほしい(38名)」「医療費に対する助成を充実させてほしい(37名)」「就労支援・雇用拡大が必要(25名)」といった意見が聞かれた. <BR>結論:身体障害者手帳を有する成人先天性心疾患患者の収入は総じて低く, 経済的問題と就労環境が, 患者に心理的苦痛を及ぼすと推察された. 就労支援体制の整備と所得保障を含めた福祉制度の充実が急務である.