高橋 美知代, 鈴木 敏和, 高木 亜由美, 金子 健彦, 松本 光, 額田 均, 橋詰 直孝, Michiyo TAKAHASHI, Toshikazu SUZUKI, Ayumi TAKAGI, Takehiko KANEKO, Hikaru MATSUMOTO, Hitoshi NUKADA, Naotaka HASHIZUME
和洋女子大学紀要 54 25-34 2014年3月 査読有り
【目的】近年、高齢者の低栄養問題が注目されている。これまで、集団を対象とした、ある一時点における横断的調査の結果が多数報告された。一方で、長期間にわたり同じ栄養摂取状態が継続された同一人物を追跡した縦断的調査はほとんどない。本研究では、4年前に栄養状態の調査を行った長期入院中の高齢者を対象として追跡調査を行い、栄養状態、自立度、介護度および認知症度の推移について検討を行った。【方法】C 県C 市N医学生物学研究所付属病院に入院している11名(男性2 名、女性9 名、年齢81.8±6.4歳、入院期間平均6.0±1.7年、2012年3 月)を対象とし、身体計測、栄養状態調査、自立度(寝たきり度)、要介護度、認知症度、および栄養素摂取調査を行った。また、血液を採取し、生化学的検査を行った。調査は2012年2 ~ 8 月に実施し、2008年1 ~ 4 月に行った調査のデータを利用して縦断的な比較を行った。また、栄養摂取方法の違いの比較も行った。【結果】対象入院患者の推定栄養素摂取量は、約4年間で減少する傾向が見られた。血液・生化学検査の結果からは、加齢に伴う栄養状態の低下が観察された。ビタミン類に関しては、栄養剤から栄養素を摂取している経腸栄養患者の方が、食事を通じて栄養素をしている経口栄養患者と比べて血中の値が良好であり、また加齢に伴う低下度は小さかった。亜鉛は縦断的な比較はできなかったが、2012年の調査では11名中10名が基準値未満であった。【考察】長期入院高齢者においては、ビタミン、ミネラル類に関しては、経腸栄養群の方が経口栄養群よりも栄養状態が良かった。しかし、経腸栄養剤に十分含まれていない栄養素に関しては不足していた。これより、経腸栄養患者に対しては、ビタミンばかりではなく、亜鉛をはじめとするミネラル類の含有量も配慮された経腸栄養剤に変更する、または使用中の栄養剤と併用して、ミネラル類の摂取量を上げることが望まれる。また、経口栄養患者に対しても、給食に加えて栄養補助食品やサプリメントなどを利用して、不足している微量栄養素の補給を行うことが望ましいと考えられる。