麻生保子, 斉藤雅茂, 野尻由香, 望月由紀子, 下園美保子, 根本明日香, 山岡和枝
保健医療科学 66(6) 630-639 2018年1月 査読有り筆頭著者責任著者
目的:人の生活に深く関わる看護・福祉系大学生には対象者の療養生活支援のための生活技術の獲得が望まれる.一般市民に,整理整頓が苦手な人は多く,大学生の生活身辺処理能力と自尊感情に関する報告はあるが,看護・福祉系大学生の整理整頓への苦手意識に着目した調査報告はない.本研究では看護・福祉系大学生の整理整頓への苦手意識と居室の整理整頓状況,対象者特性との関連を検討し,効果的支援方法の策定に資する事を目的とした.
方法:首都圏と中部地方の看護・福祉系大学生450人を対象に自己記入式調査を実施した.調査内容は整理整頓への苦手意識,整理整頓・掃除の実施者や自尊感情等の対象者特性,ためこみ状況によるストレス(SI-R),居室の乱雑度(CIR),整理整頓の頻度とした.分析は整理整頓への苦手意識の有無を結果変数として,対象者特性の粗オッズ比および調整オッズ比を求めた.オッズ比(95%信頼区間)はロジスティック回帰分析,変数選択はステップワイズ法を用いて推定した.次に整理整頓への苦手意識とSI-R得点,CIR得点,整理整頓・掃除の頻度との相関係数を求めた上で,それぞれに関連する項目を重回帰分析で求めた.有意水準は両側5%,解析はSAS9.4を用いた.
結果:整理整頓への苦手意識(有)の対象者特性による調整オッズ比は整理整頓の実施者が自分以外は2.77(95%信頼区間:1.29, 5.95),自尊感情尺度得点は0.96(同0.93,0.99)であった.整理整頓への苦手意識とSI-R得点,CIR得点,整理整頓・掃除の頻度は互いに相関し,SI-R得点に関連がある項目は性別と自尊感情尺度得点,CIR得点に関連する項目は,学年,同居の有無,整理整頓の実施者,自尊感情尺度得点であった.整理整頓・掃除の頻度に関連する項目は学科,同居の有無,整理整頓の実施者であった.
結論:看護・福祉系大学生において整理整頓が苦手な者は自分で整理整頓・掃除を行わず,自尊感情が低い傾向があった.また,学年進行が進んでも整理整頓・掃除を「自分で行わない」学生は居室が乱雑で整理整頓・掃除の頻度が少ない傾向や,一人暮らしの学生は頻回に整理整頓・掃除を行っていても乱雑な居室状態の改善が進まない状況があった.今後はこれらの学生の整理整頓への苦手意識と自尊感情に配慮した整理整頓方法習得に向けた学習機会を設ける必要性が示唆された.