金成 はるな, 大石 恭子, 香西 みどり
日本調理科学会大会研究発表要旨集 29 1-1 2017年
【目的】これまでアルカリ性の竹炭や酢酸添加炊飯により飯の粘りが増加することが報告されており, 炊飯液のpHは米飯の物理化学的性質に影響を及ぼすと考えられる. しかし, これまで種々の緩衝液を用いて炊飯液のpHそのものが米飯の性状にどのように影響するかについての報告はほとんど見られない. 演者らは先に通常調理に使用される食酢, 重曹によりpH3, 5, 7, 8.5に調整した液を用いた炊飯米について報告した1). 本研究では炊飯液のpHの影響を明らかにするため, 対応するpHの緩衝液(pH3, 5, 7, 9)で炊飯を行い, 米飯の成分・物性及び炊飯後保存に伴う飯の老化について比較検討を行った.<br /> 【方法】炊飯直後の米飯から終濃度30および80%エタノールで成分抽出液を調製し, 還元糖(ソモギーネルソン法), 全糖(フェノール硫酸法)およひ゛遊離糖(HPLC)を測定した.米飯のテクスチャーは, 炊飯直後の米飯および4℃14時間保存米飯を試料とし, テクスチャーアナライザーによる一粒法(低高圧縮2バイト法)で測定した. 生米を1.5倍量の各緩衝液に50℃1時間浸漬し, 溶出タンパク質(Lowry法)の測定とSDS-PAGEを行った.<br /> 【結果】緩衝液を用いて炊飯液をpH5一定に保ったときの米飯抽出液中の還元糖量は, pH7と比べて有意に増加した. 炊飯直後の飯の表層部の粘り・付着性は, pH7に比べてpH3, pH9において増大し, 冷蔵保存後の飯においてもその影響がみられたが, pH5では炊飯直後および保存後の飯の付着性は有意に減少した. 生米を50℃で1時間浸漬した液中のタンパク質量は, pH7に比べて, pH3およびpH9は増加, pH5は減少した. このことから, pH5では澱粉周囲のタンパク質の溶出が抑制され, 米飯表層部の付着性低下に寄与することが示唆された. <br />1)金成はるな他: 日本調理科学会平成28年度大会, p59 (2016)