筧 重和, 中島 ともみ, 佐野 有香, 金森 雅誌
東海北陸理学療法学術大会誌 28 96-96 2012年
【目的】 近年、東日本大震災や局所集中豪雨などの災害が各地区で起きている。災害に対するハザードマップの作成や避難場所の設置などについては、行政で行われている。また、社会福祉施設利用者、在宅要介護者等の安全確保策を含む防災対策の強化を行うよう、平成24年4月20日に厚生労働省(老総発0420第1号、老高発0420第1号、老振発0420第1号、老老発0420第1号)から各市町村に向けて通知がなされてもいる。この通知には、情報の一元管理と共有ができる環境を整えることが必要とあるが、そもそも、どのような情報が必要であるかは未だ検討されていない。<br> そこで今回我々は、水害時の避難能力評価表の作成を試みたので報告する。<br>【方法】 Barthel Index(以下BI)および機能的自立度評価法(functional independence measur以下FIM)の移動の項目をもとに、水害時の避難能力評価段階を作成した。<br>【評価段階について】 評価段階については、下記のように設定した。<br> 自立:雨天時、傘などを使い介助や監視なしに歩行できるとともに、足関節までの水の中を歩行できる。<br> 部分介助:雨天時、傘などを使い介助や監視なしに歩行できるが、足関節までの水の中の歩行に関しては介助が必要。<br> 全介助:雨天時、傘などを使い歩行することができず、全介助が必要。<br>【考察】 BIおよびFIMの評価については、天候などについての評価要素は含まれておらず、いわゆる晴天時などの状況を想定した評価表となっている。これらの評価段階に、今回我々が作成した評価段階を含めることにより、水害時の避難能力の把握ができるのではないかと考える。<br>【まとめ】 我々は、第22回愛知県理学療法学術大会において、在宅訪問リハビリ利用者の避難能力について報告を行った。実際に、局所豪雨が起き避難勧告が発令された中では、ほとんどの利用者が自力では避難することができなかった。避難できない理由としては、移動能力の低下が原因であった。自宅内では歩行する能力があっても、傘をさしての歩行ができない、道が川のようになっており歩行することができない、などである。リハビリテーションの対象者の多くは、歩行能力の低下が起きている。健常人でさえ、水害時に歩行で避難することは困難な場合が多い。<br> このように考えると、歩行能力の低下を起こしている場合には自力で避難することができず、逃げ遅れてしまう事も考えられる。病院を退院時や在宅訪問リハビリテーション開始時、デイケアやデイサービス利用開始時に通常の評価だけではなく、水害時の避難能力についても把握することは重要ではないかと考える。避難能力を把握する事で、私たちが直接避難介助をすることができなくても、行政などに連絡する事で対応する事は可能であるのではないかと考える。<br> 今回は、水害に焦点を当て評価表の作成を試みたが、いくつかの災害を想定して評価表を作成していく事は重要ではないかと考える。また、移動能力だけではなく、家屋状況や介護者の状況など総合的に評価することも検討し、更に検討していかなければならないと考える。<br> 本発表は、所属施設の倫理委員会の承認を得て行っている。