市村 賢士郎, 井上 裕昭, 太田 裕通, 岡 隆之介, 楠見 孝
日本認知心理学会発表論文集 2014 63 2014年
物理環境は学習効率に影響する重要な要因である。本研究では,学習者がどのように物理環境を考慮して学習環境を選択するかを明らかにするため,学習者が選択する環境と実際の物理量との関係を調査した。大学図書館で行った物理量測定調査の結果,利用者が多い場所が必ずしも物理量がよい環境ではないことが分かった。この結果を受け,学習環境を選択する際に,学習者がどのような要因を優先しているのかを調べるために,3つの異なる文脈で優先する物理的要因を順位づけするWeb調査を行った。結果,照度・温度・騒音などの知覚しやすい要因の優先度が高いこと,実測値が提示されることで換気量などの知覚しにくい要因の優先度が変化し,学習環境の選択に影響することが明らかになった。このことから,学習環境づくりにおいて,知覚しやすい要因による快適さだけでなく,知覚しにくい要因による学習効率も考慮することの重要性が示唆された。