遠藤 貴美子, 山本 匡毅, 鹿嶋 洋, 藤田 和史, 小田 宏信
経済地理学年報 70(3) 203-227 2024年9月30日
本稿では山形県長井市を事例として,分工場撤退後における製造業の存立形態を明らかにするとともに,地方小都市における自立的・安定的発展のあり方について検討した.その際,産業の多様化の視点から,機械工業の事業および生産品目の変遷だけでなく,酒造・木工玩具・織物といったクラフト的な産業の動向や,アントレプレナー養成の地域的基盤についても分析した. <BR> 事例企業らは,例えば,主要事業が創業時の電子カバー組立から電子部品組立に転換し,さらには自動車用部品加工に至るなど,技術の高度化や多様な分野への進出を遂げてきた.なお,クラフト的な産業については,海外への販路構築などの新たな戦略実施や,循環型地域づくりや観光事業への参与なども活発に行っていることが明らかとなった.さらに,インキュベーション施設であるイノベーションLab.長井i-bayでは,機械設計やモデリングなど多様な分野での新規創業が実現している.