峯木 真知子, 坂本 薫, 石井 よう子, 藤井 昭子, 新澤 祥恵, 川井 考子, 金谷 昭子
日本調理科学会誌 34(2) 214-223 2001年
有機農産物等の消費の実態を掌握するために,札幌,金沢,東京,神戸,姫路,和歌山の6地域において,流通業者側の現状調査として店頭調査を実施するとともに,消費者の意識と消費の実態および表示ガイドラインの周知度等を全国的に調査した結果,107店舗および719名のデータが得られた。 1.流通側の店頭調査では,有機農産物等を「取り扱っている」と答えた店舗は68.0%であったが,取り扱い量は1割程度の店舗が半数以上を占めた。特別コーナーを設置して販売している店舗は,全体の28.4%であった。また,取り扱いの多い品目は,トマト,にんじん,たまねぎ,じゃがいも,精白米等であった。これらの有機農産物の表示は様々で不統一であり,価格とも一定の傾向はみられなかった。これらは,平成9年度農水省有機農産物調査と比較すると,取り扱い量および取り扱い品目は急激に増加していた。 有機農産物の表示については,「ついていない」,「見にくい」,「工夫の必要がある」が15%以上を占め,流通側の工夫が必要とされる。 2.消費者対象の調査では,有機農産物に関心があるとした者は84.6%にものぼり,関心の高さが窺えた。実際に購入経験がある者も63.4%で多く,年齢が高い層ほど購入経験が多い結果であった。購入品目は,高い順にトマト,ほうれん草,にんじんであった。購入後の評価・感想を尋ねたところ,「値段はやや高く,見かけは決してよいわけではないが,味や香り,品質,鮮度についてはよく,今後購入量を増やしたい」と感じていることが明らかとなった。 今後消費者が有機農産物を購入するにあたっての問題点を質問したところ,「価格が安くなること」とともに「表示が信用できるようになること」を挙げている者が33.2%と多かった。 しかし,その一方で,「表示ガイドライン」や「オーガニック」について知っている者は比較的少なく,消費者側の意識および認識が甘いことが感じられた。 消費者が食品に対する正しい知識が持てるよう,また,信用できる,しかもわかりやすい表示を目指して,さらに様々な取り組みが必要であることが感じられた。